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2009年のしし座流星群の情報

流星と流星群 | しし座流星群について | ダスト・トレイル理論と予報 | 今年の予報 | 日本における流星数 | 観察してみよう | 関連リンク集

今年のしし座流星群について

   しし座流星群は、ときには1時間に数千個を超えるような流星嵐となる流星群です。近年では、2001年に1時間に数千個といった素晴らしい出現が日本で見られました。

 今年2009年のしし座流星群は、2001年の流星嵐と比較すると数十分の一にも及びませんが、ここ数年の中では少々多めに出現するかもしれないと予想されています。ただし、予想される極大時刻は、日本の夜明け以降になるため、日本での観測条件は良くありません。それでも、11月18日明け方の空が明るくなる直前の時間帯に、流星数が増加していくところが観察できるかもしれません。

 2等星までしか見えないような市街地で観察した場合、最も多く流星が見えると予想される11月18日の明け方4時〜5時の1時間に観察できる流星の推定数は、2〜3個です。4等星が見えるような平均的な空ではおよそ10個弱、6等星が見えるようなきれいな空ではおよそ35個となります。詳しくは、以下の解説をご参照ください。

 なお、みなさんに広く観察をおすすめできるような状況ではありませんので、観察キャンペーンは実施いたしません。あらかじめご了承ください。

観察のためのQ&A

 しし座流星群を観察するためのQ&Aのページを作成しました。参考にしてください。

 →「しし座流星群を観察するには(Q&A)」のページはこちら

流星と流星群

流星と流星群の関係を示したイメージ画像

流星と流星群の関係を示したイメージ画像です。
実際のしし座流星群の母彗星とは
軌道が異なりますのでご注意ください。
(クリックすると大きな画像をご覧になれます)

 流星(「流れ星」とも言います)とは、宇宙空間にある直径1ミリメートルから数センチメートル程度のチリの粒が地球の大気に飛び込んできて、大気と激しく摩擦を起こし、高温になると同時に光って見える現象です。

 このようなチリの粒を放出しているのは、多くの場合、彗星(「ほうき星」とも言います)です。彗星から放出されたチリの粒の集団は、それを放出した彗星の軌道上に密集しています。彗星の軌道と地球の軌道が交差している場合、地球がその位置にさしかかると、チリの粒がまとめて地球の大気に飛び込んできます。地球が彗星の軌道を横切る日時は毎年ほぼ決まっていますので、毎年特定の時期に特定の流星群が出現するわけです。

 このとき、地球に飛び込んでくるチリの粒はみな同じ方向からやってきます。それぞれのチリの粒はほぼ平行に地球の大気に飛び込んできますが、それを地上から見ると、その流星群に属している流星は、星空のある一点から放射状に飛び出すように見えます。流星が飛び出す中心となる点を「放射点」と呼び、一般には、放射点のある星座の名前をとって「○○座流星群」と呼ばれます。

 しし座流星群の場合、その元となるチリの粒を放出しているのは、テンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)で、このような天体のことを「母天体」とか「母彗星」と呼びます。

 流星の出現数ですが、流星群の放射点が地平線付近にあるときには、チリが大気にななめから飛び込んでくるためにチリの数は少なく、流星はほとんど出現しません。流星群の活動の活発さが変わらないと仮定すると、放射点の高度が高くなるにしたがって流星の出現数は多くなります。

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しし座流星群について

2001年のしし座流星群

2001年のしし座流星群の写真
画像提供:佐藤幹哉(二次使用可)
(クリックすると大きな画像をご覧になれます)

 しし座流星群は、毎年11月の中旬を中心に活動している流星群です。流星の元となるチリの粒を放出する母天体は、テンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)で、この彗星の公転周期である約33年おきに、流星数がとても多くなる「流星雨」が見られる流星群として知られてきました。
 過去においては、1799年、1833年、1866年、1966年等に1時間あたり数千個〜数十万個以上の、大変立派な流星嵐が観測されています。また近年では、1999年、2001年、2002年に、それぞれ1時間あたり数千個の流星嵐が観測されました。日本では、2001年の流星嵐が大変条件良く観測されました。記憶に残っている人も多いことと思います。

 また、流星嵐とはならないまでも、時折突発的に流星活動が活発化する年があります。今年2009年は、このような活発化する年として注目されています。

 これらの年を除くと、流星群の活動はとても低調で、流星がほとんど見られないような年もあります。しし座流星群は、活発な時期と低調な時期の差が激しい流星群の一つです。

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ダスト・トレイル理論と流星群の予報

ダスト・トレイルのイメージ画像

ダスト・トレイルのイメージ画像です。
実際のしし座流星群のダスト・トレイルとは
位置が異なりますのでご注意ください。
(クリックすると大きな画像をご覧になれます)

 かつて、流星群の活動を予報することは、大変難しいとされてきました。流星の元になるチリの粒が大変暗く、その位置やチリの粒の濃度を直接観測して推測することが困難だからです。しかし10年ほど前に「ダスト・トレイル理論」と呼ばれる新しい理論が提唱され、流星群活動をある程度予測できるようになってきました。この理論の検証に大いに貢献したのが、このしし座流星群です。

 流星の元となるのは、彗星(ほうき星とも呼ばれる)が出すチリの粒です。彗星から放出されたチリの粒は、それ自体も太陽のまわりを周回し、細長いチューブ状のチリの粒の流れの帯を作ります。この帯のことを「ダスト・トレイル」と呼びます。「ダスト・トレイル理論」では、母彗星(母天体)からチリの粒を放出してできるダスト・トレイルの位置を理論的に計算し、ダスト・トレイルとの位置関係や、その中のチリの粒の濃度によって、流星群の活発さを予測するのです。

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今年の予報について

 2009年の予報については、フランスのパリ天文台に所属し、2009年度国立天文台客員研究員の J. Vaubaillon (ヴォバイヨン)氏によるものがいち早く世界的に発信されました。そこでJ. Vaubaillon氏の最新の予報(注1)と、国立天文台天文情報センターの佐藤幹哉の予報について、以下の表にまとめましたのでご覧ください。

注1:J. Vaubaillon氏は、当初ZHR=500という予想をしていたが、昨年の観測や初期条件などの見直しを行い、この値を修正している。

ダスト・トレイル Vaubaillon氏による予報 佐藤による予報
予想極大
(日本時)
予想ZHR
(注2)
予想極大
(日本時)
予想ZHR
(注2)
1466年放出の
ダスト・トレイル
11月18日 6時43分115 11月18日 6時12分60
1533年放出の
ダスト・トレイル
11月18日 6時50分80 11月18日 6時30分160

注2:ZHRとは、1時間あたりの天頂修正流星数と呼ばれる値で、雲が無く、6.5等級の星まで見え、流星群の放射点が天頂にある理想的な条件で一人による観測を仮定した場合の1時間あたり流星数。実際に見える流星の数では無いことに注意が必要。一般的には、実際に見える流星の数は、これよりもかなり少ない。

 両者の予報結果には、初期条件の仮定や、計算手法の差違などにより、極大の時刻やZHRの値に多少の違いがあります。ただ全体として「11月18日の6時台に2つの極大があり、2つのZHRの合計は200程度となる」という点では概ね一致しています。

 なお、予想極大の6時台に観測条件が良くなるのは、世界的に見ると中央アジアの地域一帯です。残念ながら日本では夜が明けて空が明るくなり、流星の観測ができない時間帯です。したがって日本では、明け方となる直前の時間帯に、極大に向かって流星数が増加していくのが、かろうじて観測できる、という状況です。

 →ダスト・トレイルの分布状況など、さらに詳しい解説ページはこちら

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日本で見られる実際の流星数について

 前述の通り、今年予想されるしし座流星群の極大は、日本の明け方以降となってしまいます。このため、実際に日本で見られる流星数は、推測されるZHRよりもだいぶ少なくなります。

 関東地方で観測する場合を仮定して大まかに見積もると、4時から空が白み始める5時までの1時間に見られる流星数は、6等星が見えるようなきれいな空でおよそ35個、4等星が見えるような平均的な空ではおよそ10個弱の流星が見られると計算されます。一方、2等星しか見えない市街地では2〜3個の流星しか見られないことになります。

 なお国内では西に行くほど夜明けが遅くなり、極大に近い時間帯が観測できるようになるため、観測条件がよくなります。九州で観測する場合を仮定すると、4時30分から空が白み始める5時30分までの1時間に見られる流星数は、6等星が見えるようなきれいな空でおよそ70個、4等星が見えるような平均的な空ではおよそ20個弱、2等星しか見えない市街地でも4〜5個の流星が見られると計算されます。

 この予想値は誤差が大きく、実際には、見える流星がこれより少ないことも十分に考えられます。また、極大が遅くなると日本で見られる流星数が少なくなり、逆に早まると多くなる可能性も考えられます。実際、昨年は、極大が予想よりも1時間程遅く観測されました。もし、今年も同じように遅くなった場合には、日本での観測条件が悪くなり、見られる流星数が減ってしまうことになります。

 →実際に見える流星数について、さらに詳しい解説ページはこちら

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興味のある方は、観察してみよう

放射点の位置の図

11月18日4時頃の放射点の位置の図
(クリックすると大きな画像をご覧になれます)

 このような状況を考慮した結果、今年は、しし座流星群の観察をみなさんに広くおすすめできる状況ではなく、国立天文台ではキャンペーンのようなイベントを実施しないことにしました。
 しかしながら、熱心に流星を観察してみたいという方は、この機会にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。11月18日の明け方は、月明かりに邪魔されることもなく、流星のような暗い天体を観察するには大変好条件です。かなり寒い時期ですので、観察する時には、暖かい服装をするよう気をつけて臨んでください。

 さらに詳しい観察方法については、観察方法のQ&Aのページをご参照ください。

 →「しし座流星群を観察するには(Q&A)」のページはこちら

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関連リンク集

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