2012年6月6日に金星の面通過

観察方法

やってはいけないこと

太陽はたいへん強い光と熱を出しています。正しい方法で観察しないと、目を痛めたり、最悪の場合失明したりする危険性があります。

以下のようなことは、目を痛めますので絶対にやってはいけません。

  • 太陽を直接見る様子肉眼で直接太陽を見る(数秒でも危険です)
  • 望遠鏡で太陽を観察している様子望遠鏡や双眼鏡を使う(※1)
  • 下敷きで太陽を観察している様子色つき下敷きやCDを使う(※2)
  • フィルムの切れ端で太陽を観察している様子フィルムの切れ端を使う(※3)
  • すすを付けたガラス板で太陽を観察している様子すすを付けたガラス板を使う
  • サングラスで太陽を観察している様子サングラスやゴーグルを使う
  • 日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡を覗いている様子日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡を覗く
  • ※1 専門家によって適切な減光を施された双眼鏡や望遠鏡は、太陽観察に用いることができます。
  • ※2 太陽観察に対応した下敷きも発売されています。
  • ※3 専門家によって、銀塩の白黒フィルムを適切に露光・現像して作られたネガは、太陽観察に用いることができます。

肉眼で直接太陽を見ると、たとえ短い時間であっても目を痛めてしまいます。

また、下敷きやCD、フィルムの切れ端、すすをつけたガラス板、サングラスやゴーグルなどを使って太陽を見るのもいけません。見た目ではあまりまぶしく感じなくても、光の遮断が不十分なものや、目に有害な波長の光を通しやすいものがあり、気づかないうちに網膜を損傷してしまう危険性があります。ただし、下敷きについては、安全に太陽観察をすることができる製品もあります。

望遠鏡や双眼鏡は、太陽の光や熱を集めて強くするため、肉眼で太陽を見る以上に危険です。

詳しい知識がないまま中途半端な方法で太陽を観察すると、目を痛めたり、最悪の場合失明したりする危険性があります。詳しくわからない場合には、自己流の方法を試したりせず、必ず専門家の指導に従ってください。

※ 写真は、目を痛めないよう、実際には太陽を見ないようにして撮影したものです。

日食メガネ

裸眼あるいはメガネ・コンタクト使用でも、月や星がはっきりと見える人ならば、日食メガネ(日食グラスなどともいわれます)により、太陽面を通過する金星が小さなホクロのように見えるでしょう。 日食メガネは、メーカーが安全を保証している製品であることはもちろん、太陽のまるい輪郭が明瞭に見える良質のものをお使いください。使用の際には、使い方の注意をよくお読みください。

金星のシルエットの大きさは、7m先にある明るく照らされた白い紙の上の、直径2mmの真っ黒い点に相当します。 太陽はその30倍、直径6cmの円となります。 (資料48資料52

さまざまな日食メガネ
(撮影:山田陽志郎/二次利用可)
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日食メガネによる太陽の観察
(撮影:山田陽志郎/二次利用可)
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右の写真(厚手封筒を利用)のように、顔全体を日光からさえぎり日食メガネだけに光が当たるよう工夫すると、観察がしやすくなります。

太陽投影板

太陽投影板による「金星の太陽面通過」
(2004年6月8日 提供:国立天文台)
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天体望遠鏡の太陽投影板に、太陽像を投影しますと、太陽直径の30分の1ほどの大きさの金星のシルエットが観察できます。

太陽の投影中に、小さなお子さんが望遠鏡をのぞいたりしないよう十分ご注意ください。また、望遠鏡を太陽に向けているときは、望遠鏡のファインダーをのぞかないよう、しっかりふたをするか、とりはずすようにしてください。

老眼鏡による太陽像の投影

片方のレンズを使用
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レンズを手で覆い明るさを調整
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(撮影:山田陽志郎/二次利用可)

凸レンズである老眼鏡も金環日食・部分日食観察に使えます。度数+1の老眼鏡で太陽像を白い紙に投影しますと、レンズから1mの距離に約1cmの太陽像ができます。太陽の縁がシャープになるようにピントを調整します。

手でレンズの一部を覆えば、太陽像の明るさ調整もでき、見やすい明るさにすると太陽面を雲が通過するようすもわかります。太陽像直径の30分の1の金星シルエットが確認できます。

眼鏡からの太陽光を直接のぞきこまないよう十分注意してください。

参考:日食観測 太陽投影装置 DIY(YouTube)

天体望遠鏡による観察(投影板以外)

(提供:国立天文台)
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(撮影:山田陽志郎/二次利用可)
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左は、Hα線(水素ガスが出す赤い光)で観測できる太陽専用の小型望遠鏡。右は、一般の天体望遠鏡の先端部に太陽観察用フィルターを取り付けたもの。 天体望遠鏡用の太陽観察用フィルターの利用につきましては、太陽観察の専門知識のある指導者、専門店などにご相談ください。

国立天文台のHα線望遠鏡による「金星の太陽面通過」
(2004年6月8日 提供:国立天文台太陽観測所
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Hα線(水素ガスが出す赤い光)で観測できる太陽専用望遠鏡では、光球の上にある彩層を見るために、金星が太陽面に接触し始める外蝕の始めの時刻が光球面での時刻より、1分ほど早まるでしょう。同様に、外蝕の終りの時刻では1分ほど遅くなるでしょう。観察の際には数分の余裕をみておきましょう。

日食メガネや望遠鏡を使った太陽の観察については、安全な日食の観察方法を解説したページもごらんいただくとともに、製品の取り扱い説明をよくお読みください。

参照

鏡の反射光による観察

太陽光を、ピンホールに見立てた小さな鏡で反射させると、鏡のサイズの数百倍以上離れた場所にまるい太陽像ができます。残念ながら、金星のシルエットは太陽像直径の約30分の1しかないため、この方法で金星のシルエットを確認するのは困難です。

2004年の「金星の太陽面通過」:イギリスでの実験(上級者向け)

リンク先のページに載っている写真の、冒頭の2枚の写真は、比較のため望遠鏡で撮影したものです。大きさの異なる2枚の鏡を並べて使っています。3mmというミニ鏡からの反射光はどこに映っているのかよく見えないため、反射の向きを定めるため、2cm平方の鏡からの反射光を使っています。暗幕を張った部屋に反射光を導き、鏡から約30m(ミニ鏡の1万倍)離れた壁面に2つの鏡からの太陽像を作っています。

2012年6月上旬になったら、宇宙空間からの観測にも注目!

SOHOがとらえた太陽近傍の4惑星(2000年5月15日)
Credit: SOHO/LASCO (ESA/NASA)
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1995年に打ち上げられた太陽観測機「SOHO」には、コロナを観測するため、まぶしい太陽本体をおおってしまうコロナグラフも積まれています。上の写真の中央にある○が太陽の位置です。遮光板の支持棒の影が中央から左下のほうへ伸びています。 最も視野が広いコロナグラフC3では、太陽が32個並んでしまうほどの視野になります。このため、明るい惑星が太陽方向 (太陽の手前、あるいは向こう側)に近づく頃は その惑星もC3の視野に入ってきます。

惑星などがC3の視野に入ってくる時期

金星の太陽面通過の前後は、SOHOのC3画面にもご注目ください。画面内の時刻は世界時(プラス9時間で日本時)。

2012年6月上旬、金星が画面左から入ってきて右へ移動していきます。

最新のSOHO画像現在の太陽周辺星図 (中心が太陽。惑星のアイコン

各地における「金星の太陽面通過」の詳しい時刻は、国立天文台の暦計算室のサイトをご覧ください。