潜入も出現も東の空の低い位置で起こるため、その方向に山やビルなどがあって視界を遮られると、金星食を観察することができません。できれば、そのような邪魔なものがない場所を、事前に探しておくとよいでしょう。
また、当たり前のことですが、天気が悪く雲がある場合には、雲に隠されて、金星食を観察することはできません。
金星食の観察に、特別な道具を用意する必要はありません。肉眼で十分に楽しめる天文現象です。
今回は月が比較的細いため、金星食を観察していると、月が細いときに見える「地球照」(*1) も、肉眼で観察することができるかもしれません。目を凝らして月の暗い部分をよく観察してみましょう。
また、金星がマイナス4.3等と明るいため、目の良い人でしたら、日の出後も肉眼で金星を確認することができるかもしれません。月を目印にして、金星を探してみてください。
*1 地球に反射した太陽の光が月の暗い部分に当たり、ぼんやりと光って見える現象
双眼鏡や望遠鏡が用意できれば、金星の形や月の表面のクレーターなども観察することができ(*2)、金星食をさらに楽しむことができます。
双眼鏡は手持ちで観察するのではなく、なるべく三脚などで固定するようにしましょう。手持ちで観察すると手ぶれが大きく、月や金星の細部がよく見えません。
*2 双眼鏡や望遠鏡の倍率や性能によって見え方が違います。事前に月と金星を自分の双眼鏡や望遠鏡で観察し、どのように見えるかを確認しておくとよいでしょう。
最近は、ビデオカメラやデジタルカメラの性能が良くなり、暗い天体も写しやすくなってきました。そこで、ぜひ金星食を撮影してみてはいかがでしょうか。
撮影する際には、ズーム機能をなるべく望遠側にして撮影してみましょう。このとき、三脚などに固定すると、手ブレを防ぐことができます。なお、デジタルズームは画質が劣化するので、あまりおすすめできません。
写った像が明る過ぎたり、逆に暗くて月や金星が写らなかったりする場合は、シャッタースピードや絞りを調節してみましょう。月は比較的明るく、同じ面積で比べると金星はさらに明るいため、シャッタースピードを速めにしたり、絞りの値を大きく設定するとよいでしょう。露光をかけすぎると、像がにじんで広がり、(見た目には派手な感じになりますが)月や金星の形がわからなくなってしまいますし、「ゴースト」という、実際には存在しない像が発生することがあります。
またピントですが、設定することができるカメラでは「無限遠」に合わせましょう。無い場合には「遠景モード」などをお試しいただくのも、よいかもしれません。
望遠鏡を使うことができる場合は、接眼部(目でのぞく部分)に、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話を当てて撮影すると、月や金星を拡大して写すことができます。カメラの位置を接眼部の良い位置に合わせるのに少々手間取りますが、ぜひお試しください。
なお各地の観望会に参加してこの方法を試す場合には、スタッフの方の指示に従うようお願いします。観望会の妨げにならないよう、ご注意ください。
このほか、一眼レフデジタルカメラなどの場合には、望遠鏡に直接取り付けて撮影することも可能です。このような専門的な撮影方法については、専門書などをご参照ください。
※ ここでは、お手持ちの機材で手軽に撮影することを中心に、撮影方法の例をご紹介いたしました。
月と金星のまわりには、金星以外にも、惑星である木星・水星や、冬の星座の明るい星たちが見えます。このような星々を、金星食観察の合間に観察してみてはいかがでしょう。空が明るくなり始めると観察しづらくなりますので、明るくなり始める前に観察すると良いでしょう。
図1は、月と金星を中心に、まわりに見える星々を示した図です。明るい星の名前を調べる目安にしてください。
図は、東京での午前4時の星空の見え方を示していますが、他の場所でも大きくは変わりません。