2012年6月6日に金星の面通過

周期的に起こる?

金星の軌道は、地球の軌道に対し、3.4度ほど傾いています。そのため、地球と太陽の間に金星がきても、金星はたいてい太陽の上か下を通っていき「太陽面通過」が起こりません。金星と地球の軌道の面が交わっている方向で、金星と地球が並ぶことがあれば「金星の太陽面通過」が起こります。金星と地球の軌道の面が交わっている方向に地球が来るのは、6月上旬頃と12月上旬頃なので、「金星の太陽面通過」はその時期に起こっています。

6月の地球位置   大きな画像を見る
12月の地球位置   大きな画像を見る

地球の軌道と金星の軌道(図:出雲晶子/二次利用可)天体や軌道の大きさの比率は、実際とは異なります。

金星の太陽面通過リスト
日付(世界時)前回からの間隔
1631年12月7日
1639年12月4日8年
1761年6月6日121.5年
1769年6月3日8年
1874年12月9日105.5年
1882年12月6日8年
2004年6月8日121.5年
(1761年6月6日から
243年目)
2012年6月6日8年
2117年12月11日105.5年
2125年12月8日8年

ところが、「金星の太陽面通過」が起きる日時のリストを見ますと、昔は5月や11月など、1ヶ月も早く起こっていたことがわかりますし、もっと長期にわたるリストを見ても、「金星の太陽面通過」が起きる日付が未来に向かって遅くなっていく傾向がわかります。これは、日常使っている暦の1年(太陽年)では、(春分点方向の移動で)地球が太陽を正確に1周するのに少し足らない(したがって、1周ちょっと前から新年が始まる)ためです。

一度「金星の太陽面通過」が起こってから、何年するとまたこの現象が起こるのでしょうか?

金星が内合の位置、つまり太陽と地球の間に金星が来て、再びそのようになる周期は、金星と地球の会合周期とよばれるもので583.92日(約1.6年)です。

金星が内合の位置、つまり地球と太陽の間にちょうど金星が来たとしましょう。地球は太陽のまわりを365.256日(恒星年)で1周していますから、1日たつと(360度÷365.256で)0.98561度まわります。一方金星は太陽のまわりを224.701日で1周していますから、1日たつと(360度÷224.701で)1.60213度まわります。したがって、その差として、1日に金星は地球を0.61652度追い越します。毎日、0.61652度ずつ追い抜いていきますから、ついには360度追い抜くことになり、360度÷0.61652度/日で、583.92日後に再び地球と太陽の間に金星が来ることになります。

583.92日ごとに、地球と太陽の間に金星がきます。これを5回くりかえすと、8年にとても近くなります!つまり、一度「金星の太陽面通過」が起こって、8年たつとまた「金星の太陽面通過」が起こる可能性があるわけです。

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地球と太陽の間に金星がきても、前回の位置に正確にもどるわけではありません。南北方向にずれていきます。上図の斜めの線は「ずれ」の変化を示しています。金星の軌道ではありません。

6月の場合、8年後の太陽面通過の経路は、角度の約20分北にずれます。 12月の場合、8年後の太陽面通過の経路は、約24分南にずれます。 (資料25

太陽面の視半径(さしわたしの半分)は角度の約15分です。もし、太陽面の比較的中央寄りで1度金星の太陽面通過が起きると、前後8年では、金星の通過経路は角度の20分以上ずれるので太陽をそれてしまいます。

このような場合には8年間隔の「金星の太陽面通過」のペアはなくなります。(例:1396年の太陽面通過の8年前、1388年では金星が太陽面をわずかにそれています。下図参照。将来では、3089年の太陽面通過の8年後、3097年には金星が太陽面をそれてしまいます。この間の期間では、121.5年-8年-105.5年-8年 という間隔で金星の太陽面通過が起こっています)

8年間隔で「金星の太陽面通過」のペアが起こっても、16年経つと、ずれがたまり、もはや太陽面通過が起こらないこともわかります。

金星の太陽面通過のリストを見ますと、 -426年(紀元前427年)~424年や、3818~ 5171年などには、8年間隔のペアがありません。私たちは幸運にも、人によっては生涯に2度も金星の太陽面通過が観測できる時代に生きているわけです。(資料22資料23資料49

「金星の太陽面通過」の周期性(参考資料)      大きな画像を見る
「金星の内合位置(2001~2020年)」( 参考資料)       大きな画像を見る

8年たつと、金星と地球は、軌道上のほぼもとの場所にもどってきますが、わずかにずれ、約2.4日早い位置で内合となります。上図の6月と12月を結ぶ線上で金星と地球が並べば、金星の太陽面通過が起こりますが、12月の位置で金星と地球がなかなか並びません。

1月に迎えている内合の位置が、8年で約2.4日早まっています。(1月14日から1月11日へ)

この位置が8年ごとに、しだいにずれていき、やがて12月の線上にやってくるのですが、それまでに100年以上かかってしまうのです。

金星と地球の会合周期、583.92日が66回くりかえすと、105年半に近くなります。つまり、地球が105周半して、金星と地球の軌道の面が交わっているところ(太陽をはさんで両方向にあります)の反対側に来ます。再び、「金星の太陽面通過」が起こる可能性があります。実際、2012年6月6日の105年半後、2117年12月11日に「金星の太陽面通過」が起こります。

583.92日の71回分がほぼ113年半になりますし、さらに、583.92日の76回分がほぼ121年半になります。また、583.92日の152回(5+66+5+76回)分がほとんど243年になりますから、243年の周期もあります。(上図の縦の列が243年間隔になっています)

そのほか、129.5年(583.92日が81回)、137.5年(86回)、251年(157回=5+66+86回)といった周期も現れます。

1396~3089年までの期間は、121.5年-8年-105.5年-8年 という周期が続き、546~1526年までの期間は、8年-113.5年-121.5年という周期が続きます。

また、5171年以降では97.5年という周期が現れます。(例:5171~5269年ほか)

金星の太陽面通過が起こる周期には、8年間隔のペアが生じるかどうか、さらには、地球と金星の軌道離心率の変動や、軌道交線に対する地球と金星の近日点の向きが関係しています。(資料26

水星も太陽面通過を起こします。金星よりも太陽の近くをはやく動いているため、水星の太陽面通過の頻度はおよそ10倍も多くなります。(21世紀中の水星の太陽面通過は14回)

(長期にわたる金星の太陽面通過のリスト水星の太陽面通過のリスト